1、後輩の童貞を奪ってしまいました

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1、後輩の童貞を奪ってしまいました

「ねぇねぇ、童貞ってほんと?」  大学二年生になってから、ちょうど二ヶ月が経った頃。サークルが終わった後、仲の良い何人かを一人暮らしの自宅に呼んで宅飲みしてたけど、バイトとか彼氏とデートとか終電とかで一人また一人と帰っていき、いつのまにか一年生の水島慧(みずしまけい)と二人きりになっていた。  それをいいことに、気になっていたことを聞いてみると、慧は無表情で私の顔をじっと見てくる。 「本当ですけど。誰から聞いたんですか」  あっさりと答えてくれた慧の質問には答えず、にっと笑って、慧との距離を詰める。   「慧かっこいいし、意外だなぁと思って。先月まで付き合ってた子いたんだよね?」  クールな雰囲気だけど、顔立ちも整ってるし、身長も180近くありそうだし、慧はかっこいい。黒髪にいつもつけてるピアスもよく似合ってるし、服のセンスも悪くないし、これでモテない方がおかしいと思う。 「高校の同級生です。大学離れてから上手くいかなくなって、そういう関係になる前に別れましたから」 「へぇ〜、でも、慧ならまたすぐに彼女できるよね。慧ってかっこいいし、背高いし、話しやすいし」 「それはどうも」  背の低いテーブルの上には、二、三年生で開けたお酒の缶と瓶の(から)がたくさんある。だいぶ酔いが回ってきたのか、楽しくなっていつもより饒舌になってしまっていたけど、一滴もお酒を飲んでない慧とのテンションの差が辛い。 「慧も一人暮らしだし、これからは好きな時に女の子連れ込めるね」 「そのために一人暮らししてるわけじゃないから」 「早くしたいと思わないの?」 「思わなくもないですけど、焦ってはないです。彼女が出来て、自然とその時が来てからで良いです。無理してまでしようと思いません」 「真面目なんだ」 「別に普通でしょ」  少し呆れたような慧の視線と言葉に胸がチクリと痛むと同時に、なんだか少しイラッとした。    「普通ね。そっか、それが普通なんだ」 「え?」  そうだよね。簡単に付き合ったり別れたり、彼氏でもない人としちゃう私って、終わってるよね。
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