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「花音先輩?」
大好きな人と別れた日の朝を思い出してうつむいていると、心配そうに顔を覗き込まれ、慧の身体にぎゅーって抱きつく。
「だからね、また私が怒らせるようなことして慧が帰っちゃったのかと思って」
「帰らないですよ。怒るようなことは特に何も———」
そんなことを話しながら慧は少しだけ身体を離して私の顔を見たけど、その途端ぎょっとしたような表情を浮かべ、私の顔を二度見した。
「泣いてるんですか?」
「泣いてない……」
慧の身体に自分の顔を押しつけてグリグリする。私めんどくさすぎ。なんなの、彼氏がシャワー行って戻ってきたら泣いてるとか。
「いや、泣いてますよね。不安にさせました?」
こんな顔を見せたくなくて慧に抱きついてたのに、両頬に手を置かれて上を向かされる。何て言ったらいいのか分からなくてただ首を横に振っていたら、ぎゅっと抱きしめられた。
「もし不安にさせてたらごめん。これからは勝手に帰ったりしないから」
「違うよ……。慧は悪くないから謝らないで」
「本当に? 何かあったら何でも言ってください」
こんなに慧は優しくて私を大切にしてくれるのに、どうして不安になるんだろう。慧が私を好きでいてくれればいてくれるほど、慧の気持ちがなくなる日が来ることが怖くなる。
「花音先輩、」
何かを言おうとした慧をベッドに押し倒し、上にのっかって唇を奪う。
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