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「ごめんね。慧のことちゃんと好きだよ?
でもね、もう少し様子を見たいの。上手くいくかどうか慎重に判断したい。しばらく付き合って大丈夫そうだったら、みんなに言ってもいいかなと思ってる」
何かを考え込んでいる慧の腕にもたれかかると、その腕が私の腰に回される。
「どのくらい様子見るんですか」
「とりあえず三ヶ月ぐらい?」
「それまで誰にも言わないつもりですか」
「一花にはもう言っちゃったし、サークル以外の友達か口硬そうな子なら慧も話してもいいよ」
「……。俺、隠し通す自信ないですよ」
「もしバレちゃったらその時は仕方ないよ。でも、なるべくバレないようにしよ?」
慧の顔をのぞき込むと、慧は私から視線をそらし黙り込んでしまう。
「慧?」
「分かりました。納得は出来ないけど、花音先輩が慎重に判断したいって言うのなら尊重します」
「本当? 無理してない?」
「無理してます」
「慧〜」
「だから、俺は納得出来ないって言ってるじゃないですか。でも花音先輩はそうしたいんですよね?」
「……うん。だって、考えてみてよ? みんなに知られてても上手くいってる時はいいんだけどね、別れた後に気まずくならない?」
「別れた後の話するのやめてもらっていいですか」
「ごめん」
まだ話の途中だったけど、慧がイライラしてきてるのを感じて口をつぐむ。
「そろそろ時間だし、とりあえず先出ますね。また後で」
「うん、また後でね」
話しているうちにいつのまにか時間が経っていたみたいで、チラリと時計を見ると8時半を過ぎている。
それを確認した慧は、私を引き寄せてちゅっと唇にキスをしてから部屋を出ていった。
う〜ん……、また慧のこと傷つけちゃったかなぁ。
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