12、初恋でもないのにね

4/12
前へ
/226ページ
次へ
 モヤモヤしたまま練習の時間が過ぎて、夕ご飯の時間になった。貸し切りのバイキング会場でお皿にバランス良くよそっていると、目の前にいた慧と目が合う。 「この後、時間あります?」  私たちの近くにはちょうど誰もいなかったし、慧は私の顔を見ていたから、私に話しかけてるのは明らかだった。  だけど、少し後ろの方にみくちゃんを見つけて、昼間のまゆみの話を思い出してしまい、つい慧から顔を逸らしてしまう。そのまま無言で通り過ぎて、お皿を持って席に戻る。  席についた後で恐る恐る振り返って見ると、慧は固まったままこちらを見ていた。  さいあく。彼氏が女友達と仲良くしてたからって一人でモヤったあげく、彼氏を無視するとか。中学生の初恋かな? て、今時中学生でももう少し上手くやるよね。  もう私、慧といるとどうしたらいいのか分からなくなる。  経験は人よりも多いはずなのに、今までどうやって付き合ってきたのも思い出せないし。何のための恋愛経験なんだか。  あまりにも対応がまずすぎる自分に嫌気がさし、半分ヤケになってお皿によそった食べ物をバクバクと食べ始めた。
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

177人が本棚に入れています
本棚に追加