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3、どうしようもない女でごめんなさい
誠意を持って話す。
そう約束したのはいいけれど、誠意ってどうやって見せればいいのかな?
「この前同じ学校に気になる子いるって言ったじゃん」
「うん」
「デート誘ったらOKもらえたわ」
「すごいじゃん、おめでとう」
「一応目標としては、次のデートで告白して、そのあとホテルに行きたい」
「一回目のデートで? 早くない?」
「そ? 別に付き合うんだからよくね?」
「まあね、いいんじゃない?」
スーパーでのバイトの休憩中。休憩室で一緒になったひとつ年上のあっきーと恋愛トーク、というよりもゲストークをしている私は、きっと誠意とは程遠い人間だと思う。
バンドやってそうな見た目も言動もチャラい目の前にいる男は、実際にバンドやってて音楽系の専門学校に通っているらしい。
「だろ? 飲みに行く予定だし、酒飲んでキスして良いムード作るつもり」
「良いムードね」
「何、その微妙な反応。酒飲んだらヤリたくならない?」
「お酒飲んでからキスするの、あんまり好きじゃないなぁ。飲んでから舌入れられると、ゲロゲロって感じになる」
そりゃお酒飲んでからシタこともあるけど、えっちするだけならまだしも、舌入れられるとうげってなるから苦手なんだよね。えっちだけしてキスしないわけにもいかないし、我慢してするけども。
「それ、飲み過ぎなんじゃない?」
「飲み過ぎかぁ」
あっきーから冷静にツッコまれ、納得せざるを得なかった。
でも、そういえば。慧とキスした時もわりと量飲んでたけど、あの時は気持ち悪くならなかったな。むしろめちゃめちゃ良かったし、キスだけじゃなくてえっちも良くて。
「のんちゃんは? 恋とかないの?」
慧との一夜を思い出しているとあっきーから声をかけられ、はっとして顔を上げる。
「ん〜私は……、あ、そうだ。この前入った磯川くん、わりとタイプだって言ってたよね」
「あーね、あのアイドル顔の人ね。何か進展あった?」
そう聞かれ、フルフルと首を横に振る。
「高校の時から付き合ってる彼女いるんだって。残念」
つい二週間前にバイトに入ってきたばかりで、二つ年上の磯川くん。正直タイプだったけど、長い付き合いの彼女がいるらしい。彼女がいるんじゃ仕方ないよね。
「もうそんなこと聞いたの? さすが名人。おとなしそうな顔して、やることが早いっすね」
「名人やめて」
ヒュウ♪と口笛を鳴らされ、やめてと手で咎める。そんな話をしながらも、今日もいつも通り休憩時間が過ぎていった。
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