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しばらくぎゅーした後、慧はまた身体を離して私の顔を見る。
「けど本当のことを話してくれて良かった。ありがとうございます」
なぜかお礼を言われちゃったけど、冷静に考えると私のワガママなんだけどね。慧はみんなに話したいって言ってくれてるんだから、みんなに話せば今回みたいなこともなかったし、全部丸く収まるわけだし。
「嫌われたかと思って焦った」
曖昧な笑みを浮かべていると、慧は私の肩に頭を乗せてもたれかかってきた。
「好きだよ?」
寄りかかってきた慧をヨシヨシしていると、さらに身体を寄せてきてぴったりとくっつかれる。
「花音先輩だけです。先輩が嫌なら、もう他の女子と話さない」
「何言ってるの、話してよ。さすがにそれは無理があるでしょ」
本気なのか何なのか分からないけど、どう考えても無理な発言に少し笑ってしまうと、慧はいきなり身体を起こして私から距離をとった。
「花音先輩たくさん好きだって言ってくれるけど、すぐ別れるとか俺が他の女の子を好きになるとか言うじゃないですか。どうすれば信じてもらえるのか分からないです」
「別れるじゃなくて、別れるかもね。慧のこと信じてないわけじゃないよ? でもさぁ、それとこれとは別の問題じゃない?」
「別の問題ですか。俺には全然分からないです」
そう呟いた慧はため息をついて、運転席のシートに身を預けた。
分からないかぁ。
慧を信じてることと、いつか別れるかもって思うことは全然違うことで別の問題なんだけどな。でもそれをどうやって説明したらいいのか、私にも分からないよ。
「ごめんね〜慧、今私出来ないけど。代わりに口で出してあげよっか?」
にっこり笑いながら慧のズボンを下ろす真似をすると、慧は慌てて私の手を掴む。
「やめろって。ここ道だからな。そんなことのために呼び出したわけじゃないから」
「だよね〜。ごめん冗談。そろそろ帰る?」
座席を元の位置に戻して、シートベルトをつけようとすると、ベルトをつける前に腕を掴まれた。
「帰る前に一つお願いしていいですか」
「ん? どした? やっぱり出してほしい? いいよ♡」
「違う。それ本気で面白くないから」
「ごめんってば。そんな嫌そうな顔しないでよ〜。ね、お願いって何?」
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