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「中身は見てないよ。画面に名前が表示されてたから見えちゃっただけ」
「そういうことですか」
「なに〜? 見られたら困るやりとりでもしてるんだ?」
「違うって。見られても問題ないです。何なら今見せても……、あ〜ちょっとこれは……」
隣に座ってスマホを見ている慧をつつくと、スマホの画面を一瞬注視した慧は眉をひそめて口ごもる。
「やっぱり見せられないんじゃん」
「やましいことは何もないけど、個人情報が入ってたから」
スマホを置いた慧を横目で見ると、真顔でそんなことを言われた。
「はいはい、個人情報ね。浮気ならバレないようにやってね」
別に本気で疑ってるわけじゃないけど、ちょっとだけ慧の言動が怪しく感じたので嫌味っぽく言っておくと、肩を掴まれて正面を向かされた。
「浮気なんかしてない」
「へぇ〜。みんなそう言うよね」
「いや本当に。バイト終わった後はいつも花音先輩と会ってるし、サークルも一緒だし、浮気する時間ないの知ってますよね」
「時間はあるものじゃなくて作るものだよ、慧くん。私とは学部も学年も違うけど、みくちゃんとは学部一緒なんだしさ。一緒に授業サボるか休講になるかしたら、いくらでも時間作れるよね」
ね?と片目を瞑ると、嫌そうに目を細められてしまう。
「浮気のアドバイスやめてもらっていいですか。そんなの考えたこともなかったです」
慧の反応からして本気で何もないんだろうけど、でもまあ私としてはちょっと面白くないものがある。なんかちょっと怪しかったし。
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