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「もういいって、慧」
「何がいいんですか」
「慧が浮気してないことは分かってるから」
みくちゃんに電話をかけようとしている慧をなだめると、慧は少しためらった後でスマホを机に置いた。
「けど怒ってましたよね」
「ん〜怒ってはないけど、少しモヤモヤしただけ」
「何が」
「私よりもみくちゃんの方が距離近く感じちゃって。みくちゃんにはタメ口でみくって呼ぶのに、私には敬語だし」
「いやそれはみくがタメだからで———、ああそっか。じゃあ花音って呼んでいい?」
途中まで言いかけた後で、慧は何かを閃いたように言葉を止め、少し溜めてから名前を呼んでくれた。先輩より呼び捨ての方がやっぱり嬉しいけど、それはそれで問題があるんだよね。
「二人の時はそうしてほしいけど、でもそうすると絶対混ざるよね? サークルの時もつい呼び捨てしちゃったりとか」
「多分混ざりますね」
即答した慧に、やっぱり今まで通りでとすぐに付け加える。
慧は普段からタメ口な時あるし、今でも半敬語みたいなものだから、タメ口はまだいいとしても。みんなの前で先輩を呼び捨てにしたら、さすがに関係を怪しまれるよね。
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