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「何もないって分かってるけど、気になっちゃってダメなんだよね。
私、慧といるとどうしたらいいのか分からなくなる。他の女の子と話してると気になっちゃうし、本当は慧の彼女は私だって言いたい。
慧と一緒にいるとどうしようもなくなって苦しいのに、離れるとすぐに会いたくなっちゃうし、いつも一緒にいたいって思っちゃうの」
「それ、そのまま慧に伝えたらいいんじゃないの?」
「無理〜。重いし、面倒な女って思われる」
またスマホをチェックしている一花にすがりつくと、一花はスマホを手に持ったままこちらを振り向く。
「そう? 嬉しいと思うけど」
「そうかもしれないけど……。そんなこと言ったら、私が慧のことすっごく好きみたいじゃん」
「好きなんじゃないの?」
「好きだけど。そこまで伝えていいのか、まだ確証が持てないの」
好きだと伝えることは出来ても、自分の心を全部曝け出すのは、私にとってキスよりもセックスよりもずっとハードルが高いこと。
よく分からないって顔でこちらを見てくる一花に身を寄せ、小声で囁く。
「それに、恩田先輩と付き合ってた時の気持ちと、今の慧に対する気持ちのどっちが大きいか分からないの」
「まだ未練あるの?」
「そうじゃないけど、私にとって恩田先輩は特別で、たぶんそれは一生変えられないと思う」
「のん、恩田先輩のこと大好きだったもんね」
「うん。今思うとバカみたいだけど、本気で恩田先輩と結婚したいって思ってたし、運命の人だって信じてた」
恩田先輩のことを思い出したら、別れた時のことや別れた後の記憶まで蘇ってきて、なんか気分悪くなってきた。ため息をつくと、一花はスマホをいじるのをやめて私の顔を見る。
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