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14、その人、私の彼氏です
大学が始まって最初の金曜日。
午前中の授業の後に学食でお昼ご飯を済ませ、サークル棟のトイレで軽くメイクを直す。
胸の辺りまである髪の毛を整えてから、透明のピンク色のグロスを塗っていると、誰かがトイレの中に入ってきた。
鏡越しにチラリと見ると、明るめの茶髪をあごの辺りで揃えたボブヘアの可愛い女の子———みくちゃんと目が合う。
「こんにちは」
「こんにちは〜」
ペコリと頭を下げるみくちゃんに軽く会釈を返してから、もう一度グロスを塗る。
「あの、」
「うん」
「花音先輩のこと不安にさせてしまったみたいで、ごめんなさい」
「え?」
「慧くんと付き合ってるんですよね? 私、全然知らなくて……。花音先輩に誤解されるからもう連絡してこないでって、慧くんに言われました」
「!?」
全く予想もしていなかったことをみくちゃんに言われ、グロスを唇からはみ出して塗ってしまう。ティッシュではみ出したグロスを拭き取ってから、鏡越しにみくちゃんを見ると、みくちゃんは申し訳なさそうに眉を下げていた。
何、え? 慧がそんなこと言ったの?
言うなって、言ったのに。何で早速言ってるのかなぁ〜!
とりあえずグロスをメイクポーチにしまってから、身体の向きを変えてみくちゃんの方に向き直る。
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