14、その人、私の彼氏です

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 よく晴れた10月最初の土曜日。  いつもは下ろしていることの多いピンクベージュの髪を崩れないように編み込み、半袖のシフォンブラウスに短パンを合わせた私は、大学の正門の近くの広場でマイクを握っていた。  学祭に来るために来た人たちがどんどん通り過ぎていく中、足を止めて演奏を聞いてくれる人もいる。カラオケも好きだけど、こうやって知らない人たちにも聞いてもらえる中で歌うのも大好き。すっごく気持ち良い。  この日のために練習してきた曲を数曲歌い終え、ペコリと頭を下げると聞いてくれていた人がたくさんの拍手をくれる。近くで聞いてくれていた慧と目が合って、ニコッと笑いかけると、軽く手を上げてくれた。  誘うタイミングなくして、まだ一緒に回ろって誘えてないけど、聞いてくれてたならちょうど良かった。後で誘ってみよっと。  そんなことを考えながら楽器の片付けを手伝っていると、いつのまにか慧が見当たらなくなっていた。     たぶんそこら辺にいるかなと近くを探してみたけど、人が多すぎて全然見つからない。ポップコーンを出しているお店の辺りまで行ったところで、慧を探すのを早々に諦める。たぶん電話した方が早いよね。
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