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「とにかく俺は心配なんです」
「分かるけど。お揃いの指輪なんてつけてたら、これみよがしに私たち付き合ってますアピールみたいにならない?」
「まあ……。そうなりますよね」
諦めたようにそう言った慧は握っていた私の手を離し、遠くの方を見る。
がっかりしているのが隠しきれてない慧がなんだか可愛く感じて、自然と口元に笑みが浮かぶ。
慧やみくちゃんを見ていたら、そこまで頑なに隠す必要もないかなっていう気もしてきた。いつまでも先のことばかり心配してても、肝心の今を楽しめなかったら意味ないもんね。
「とりあえず見に行ってみる?」
「いいの?」
「うん、つけるか分からないけど」
「それでもいいです。とりあえず見に行く気にはなってくれたんですね?」
「そうだね。ね、この後って何か予定ある? もし何もなかったら、一緒に回らない?」
「もし誰かに見られたら、何か言われるかもしれないけど」
「大丈夫」
にこっと笑いかけると、慧はじっと私の顔を見て、それから照れたように笑う。
「じゃあ行きますか」
「手は繋がないよ?」
さっと私の手をとった慧の手をやんわりと外す。一緒に回るとは行ったけど、ここで手を繋ぐのはさすがにね。
「いこっ」
手を外すと目で不満を訴えてくる慧の背を押し、屋台が出ている方へと歩いていく。
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