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「私たちの曲も聞きにきてくれたんだね」
屋台で買ったたこ焼きを食べながら話しかけると、こちらを振り向いた慧と目が合う。
「彼女が出てるんだから行きますよ」
「えへ♡どうだった?」
当然のことのように言ってのけた慧に身を寄せる。ぴったりついてかないと、人の波に流されてはぐれちゃいそうだね。
「いつもより良かったんじゃないですか。練習の時よりも客がいる時の方が上手い気がします」
「ほんと? それならよかったぁ。声量ないから、実はちょっと心配だったんだよね」
「そうですか? 俺は花音先輩の声好きですよ。優しくて可愛くて、聞いてると癒される」
真顔でそう言われて、思わず口元がニマニマしちゃう。
「そう言われると照れるけど、でも嬉しい。ありがとう。慧たちのも聞いてたんだけどね、」
そんな話をしていたら、ちょうどみくちゃんと雅史くんとすれ違って、みくちゃんと手を振り合う。誘ってみるって言ってたけど、成功したんだ。よかった、気になってたんだよね。
「みくちゃんと雅史くんいたね」
「いましたね」
「協力してほしいって言われたんだけど、私が協力するまでもなさそうだね。みくちゃんなら可愛い子だしいい子だし、雅史くんも悪い気はしないよね。慧もそう思うよね?」
「たぶん」
「さっきも演奏中の二人を見てたんだけどね、なんとなく息が合ってるように見えるんだよね」
「そうですか」
「何でそんなそっけないの?」
「みくと雅史の話ばっかりですけど、彼氏は見てなかったんですか」
私だけ一方的に話してるのが気になって、上目遣いで慧の顔を見つめると、ちょっとムッとしたような顔を向けてきた。なんだ。それで拗ねてたんだ。
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