14、その人、私の彼氏です

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「のん?」  急に立ち上がると一花に声をかけられたけど、それにも答えずに慧の元に向かう。 「慧は私のだから、ダメっ」  まりか先輩と慧の間に入り、慧の顔を掴んで唇を重ねる。 「ええ……マジ……?」 「どういうこと?」 「のんちゃんと慧って付き合ってるの?」  周りがざわざわする声が聞こえたけど、もうどうでもいいや。何秒かキスしてから唇を離すと、驚いている慧と目が合った。慧は固まってたけど、しばらくして私を抱き寄せ、今度は慧の方からキスをされる。 「何見せられてるの、これ」 「ひゅ〜♪」 「いいぞ〜もっとやれ〜」  初めは戸惑っていたみんなの声も、しだいに冷やかすような声に変わっていく。なぜか拍手まで聞こえてきたし。もうこれ完全にバレたよね。 「花音と慧って付き合ってるの?」  私たちが唇を離すと、あっけにとられているまりか先輩からそんなことを聞かれる。 「付き合ってます」  私が何か言う前に慧が即答し、私もこくりと頷くと、さっきまで赤くなっていたまりか先輩の顔色がさっと青くなる。 「ごめんねぇ、花音〜。二人が付き合ってるなんて全然知らなかったのぉ。ふざけてただけだからね? 本気で慧のこと奪ろうなんて思ってないから、怒らないで?」  すがりつくようにまりか先輩から抱きつかれ、なだめるように背中をなでてから、やんわりとその腕から逃れる。 「いえいえ〜大丈夫です。怒ってませんよ? ちょっと頭冷やしてきますね」  たぶん本当に酔ってふざけてただけだと思うし、この調子じゃ明日には忘れてるんだろうし、別にまりか先輩に怒ってるわけじゃないけど。でも今になって急に自分の行動が恥ずかしくなってきた。とりあえずこの場から消えたい。
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