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「でもさ〜慧は元カノと友達みたいな雰囲気って言ったけど、それでもキスしたりはしてたんだよね」
「もう俺の元カノの話はやめませんか」
「やめるけど、最後にこれだけ話させて。いっこだけ」
「……どうぞ。本当に一つだけですよ」
慧に身体を預けたまま元カノの話を再び持ち出すと、慧は嫌そうにしてたけど、それでも話は聞いてくれるみたい。
「慧は前の彼女のことがすごく好きだったんだね」
「何でそう思うんですか」
「だって、本当に好きな人には手を出せないってよく言うよね。大事にしたいからとかそういう」
「いやだから、俺が元カノとキスまでだった理由はさっき言っただろ。
それにその、本当に好きな人には手を出さないっていうのが俺にはよく分からないです。好きだったら触れたいと思うしキスもしたいし、抱きたいと思う。彼女がしたくないって言ったら我慢するけど、何で手を出したら大事にしてないってことになるのか分からない」
真顔でそう言われ、たしかにと頷く。
キスしかしてないのに二年も付き合ってたことが引っかかってそんなことを言っちゃったけど、慧の言う通りかも。長く付き合ってる友達で身体の関係持ってないって聞いたことないし、時と場所さえあればそうなるもので、別に大事にしてるかどうかは関係ないのかな。
「じゃあさ、もし私が今日から一年間えっちなしねって言ったら、慧は我慢してくれる?」
「一年……?」
「うん♡」
唐突な質問に慧は目を瞬かせていたけど、少し時間をあけてから口を開く。
「それ、一ヶ月ぐらいにならない?」
「あははっ、一年から一ヶ月って」
大真面目にそんなことを言い出した慧がおかしくて吹き出してしまったけど、でも真面目に考えてくれたことが嬉しくて、元カノへの嫉妬心も薄れていく。
「一年は長すぎだろ……」
「だよね。そんなこと言わないから大丈夫。もし慧が我慢出来ても、私が我慢できないもん。ごめんね、変なこと言って。ちょっと嫉妬した」
慧の方に身体を押し付けると、私の身体に回されていた慧の手にも力が込められ、強く抱き寄せられる。
「俺は花音先輩が好きです。今までも、これからも」
「私も慧が好き」
少し身体を離して慧の目を見つめると、慧はわずかに顔を傾け、唇を重ねてきた。本当に好き。まだ元カノと付き合ってた期間の半分もいってないけど、それよりも長く一緒にいられるといいな……。
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