15、幸せな未来を夢見てもいい?

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「今日遅れてきたけど、何かやってたの?」  海に沈んでいく夕日を見ながら、しばらくたわいもないことを話していたけど、ふとそんなことを思い出して慧の顔を伺う。  四限が終わってから行こうって約束してて、大学の駐車場で待ち合わせてたんだけど、三十分くらい慧は遅れてきた。もちろん連絡もくれたし、そこまで待ってないから全然いいんだけど。ただ慧が遅れてくることってあんまりないから、何をしてたのか少し気になって聞いてみる。 「ゼミの申し込みと、海外留学の手続きに行ってました」 「留学?」  ゼミ……はいいとして、留学って何? 「うん。春休みの間にカナダに一ヶ月行ってくる」 「なんだぁ、びっくりした。てっきり一年くらい行くのかと思った。一ヶ月ね、……え〜一ヶ月もいないの? 寂しい〜。寂しすぎて浮気しちゃうかも」  わざとらしく泣き真似をすると、呆れたような視線を向けられる。だってさぁ〜。さすがに浮気はしないけど、毎日のように会ってるのに一ヶ月もいないなんて寂しい。 「一ヶ月ですよ? 電話も出来るし」 「ごめん、冗談。おとなしく待ってるよ。慧って英語話せるの?」 「話せるようになるために行くんじゃないですか。多少は勉強もしてるけど」 「机で勉強してるよりも、現地に行っちゃった方が良いって言うよね。向こうでガールフレンド作るのが一番上達早いって聞いたことある」 「らしいですね」  反応薄い慧にちょっとムッとして、口を尖らす。 「バレないようにやってくれたら私は何も言わないけど、本気にならないように気持ちの線引きはしてね。あと向こうでガールフレンドが出来ても、ちゃんと私にも電話してね」 「何言ってるんですか。俺には花音先輩いるし、そもそも遊び歩いてる時間なんてないから」 「そうなの? けっこう詰め詰めな感じ?」 「そう、スケジュール見たらキツそうだった」 「そうなんだぁ。大変そうなら、電話無理しなくてもいいよ?」 「電話はします。俺が声聞きたいから」  隣に座っている私の手をぎゅっと握ってくれた慧の目を見つめると、見つめ返されたのでなんとなく恥ずかしくなって、視線を逸らす。
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