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下から手を伸ばすと、両手ともぎゅっと握られて、その手をシーツに押し付けられる。握った手には今までにない指輪の感触があって、そんなことさえもドキドキしてしまう。
「慧……」
何か言葉をかけようとしたけれど、何も言葉にならなくて、結局名前を呼ぶことしか出来ない。そんな私の唇に、慧は何度もキスを落とす。
「もう、キスしすぎ」
両手を押さえつけたまま、息をつく間もないほどに唇を重ねるだけのキスを何度もされ、少し苦しくなって訴えると、またキスが降ってくる。
「ね、どうしたの?」
全部嫌じゃないし、嬉しいんだけど。ずっと手を離してくれないし、さっきからキスばっかりしてくるし。不思議に思って慧を見上げると、ぎゅっと握られている両手をさらに強く握られる。
「好きです」
「私も好きだよ?」
「付き合う前も何回気持ち伝えてもはぐらかされてたけど、付き合った後も大事な話するといつもはぐらかしてたじゃないですか」
「……そうだね」
「すぐ別れるかもとか付き合ってることも内緒にしたいって言うし。花音先輩の本心がどこにあるのか分からなくて、時々不安になる」
「不安にさせてごめんね。でも、」
「だから花音先輩が俺との未来を考えてくれるなんて期待してなかったけど、真剣に考えてくれてすげー嬉しい」
私が続けようとした言葉に被せられるように言われたことに、ぎゅーっと胸が締め付けられるみたいな気持ちになった。
付き合う前も付き合った後も私の曖昧な態度で慧をたくさん傷つけて苦しませてきたと思うけど、それでも好きでいてくれて、こんな風に言ってくれて、慧がどれだけ私のことを好きでいてくれるのかがすごく伝わってきて。
申し訳ない気持ちもあったけど、それ以上にすごく嬉しい。やっぱり慧がすごくすごく好きだなって思う。
「先のことはどうなるか分からないけど、私慧のことすごく好きだよ。ずっと一緒にいられたらいいなって思ってる」
本心からの気持ちを伝えると、慧は押さえつけていた私の両手を離し、ぎゅっと抱きしめてきた。私もようやく自由になった手を慧の背中に回す。
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