16、忘れたはずなのに

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 何コールか鳴らすと、慧は電話に出てくれた。 「慧?」 「……うん。どうした?」  電話に出てくれた慧の声はすごく眠そうで、その声にハッとする。衝動的に電話しちゃったけど、5時なんてまだ寝てる時間だよね。 「ごめんね、寝てた?」 「寝てた。何かあった?」 「あのね、変なこと聞くけど、私たちって付き合ってるよね?」 「は? 付き合ってるけど。いきなり何?」 「ごめん、なんでもない。それならいいの。起こしちゃってごめんね。もう切るね」 「それはいいんですけど、何かあったんですか? 今からそっち行こうか?」  眠たそうにしてた慧もだんだん意識がはっきりしてきたみたいで、電話を切ろうとした私を引き止める。その声がすごく優しくて、なんだか胸が苦しくなった。 「ううん、大丈夫。ありがとう。今日はね、説明会なんだ。準備して行かなきゃ。慧も授業でしょ?」 「説明会の後は?」 「一花とご飯行って、そのままバイトかな。今日は夜の12時までなの」 「じゃあ、今日は会えない?」 「そうだね。今日はちょっと忙しいかな。また連絡するね」 「うん、何かあったらいつでも連絡してください。説明会がんばって」 「ありがとう。慧も授業がんばってね」  そんなことを話してから、私から電話を切る。  説明会に行くにはまだ早すぎるので、もう一度寝ようとしたけど、眠れる気分でもない。  恩田先輩と別れたばかりで一番苦しかった時期は同じような夢を何度も見たけど、何で今になってあんな夢見たんだろ。  慧とも順調だし、恩田先輩のことを思い出すことも少なくなってきたのに。どうして今になって……。  考えたくもないけどさっきの夢のことを考えてしまい、眠れないのにただベッドに横たわってため息をついた。
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