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「やっぱり彼女が大切だって分かった。彼女に申し訳ないことしたって後悔してる」
「あ〜……そういう……」
「のんちゃん、ごめん。のんちゃんにも申し訳ないことしたよね。のんちゃんが悪いわけじゃないんだ。のんちゃんが可愛くて、いい子だって分かってる。だけど、俺」
私の両肩に手をつき、頭を下げた磯川くんを見て、急激に頭が冷えていく。
ほんとにバカだな、私って。彼女がいる人と関係持ったらこうなるって、最初から分かってたじゃん。
「うん、彼女が好きなんでしょ? 仕方ないよね」
「ごめん。もし彼女と出会う前にのんちゃんと会ってたら……」
「早く行きなよ。旅行遅れるよ?」
「でも、のんちゃん」
「大丈夫大丈夫。私は大丈夫だから」
うん、大丈夫。別に付き合ってたわけでもないし、好きだったわけでもない。ほんのすこしイイなって思っただけだし、傷ついてなんかないもん。あえて言うなら今後のバイトが気まずくなるぐらいだけど、まあそれも自業自得だし仕方ないよね。
申し訳なさそうな顔で私を見つめる磯川くんの背を押し、作り笑顔でバイバイと手を振る。
磯川くんは最後まで私の方を気にしていたけど、結局ドアを開けて玄関から出て行った。
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