16、忘れたはずなのに

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 何人かに紛れて入ってきたのは、スーツを着てネクタイをしめた恩田先輩———今朝夢に出てきた元カレ。忘れたくてもずっと忘れられなくて、大好きだった人。 「のん? どうしたの? ……え。マジ?」  先輩の姿を見つけるなり固まってしまった私を不思議に思った一花は私の視線を辿り、ぎょっとして先輩と私の顔を交互に見る。 「うわ、マジか。大丈夫?」 「うん、なんとか。もうすぐ始まるみたいだね」  心配そうに私の顔を覗き込む一花にどうにか笑顔を作り、前を向く。  ここにきてるってことは恩田先輩が今日説明にきてくれたOBのうちの一人ってことなんだと思うけど、人も多いし個別に話す機会なんてないだろうし、だから大丈夫。説明会に集中しよ。  そんなことを思ったのはいいものの……。 「もしかしたら知っている方もいるかもしれませんが、一応初めまして。恩田聡介と申します。 僕は———」  説明会はいきなり恩田先輩がトップバッターを切り、正直その後の先輩たちの説明も何も頭に入ってこなかった。  穏やかな話し方に、優しい笑顔。  あの頃と全然変わってないな……。
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