16、忘れたはずなのに

6/13

175人が本棚に入れています
本棚に追加
/226ページ
「それではこれで説明会は終わりますが、質問のある方は前に来てください」  それから二時間近く地獄のような時間に耐え、ようやく説明会が終わった。質問のある方はとか言われても何も話聞けてなかったし、恩田先輩の近くに行きたくないし、とにかく早く帰りたい。  一花が女の先輩に質問にいっている間席で待ち、帰ってきたらすぐに帰ろうとしたけれど、ちょうど席を立って出て行こうとしている恩田先輩と目が合ってしまった。 「花音? 一花ちゃんも。うわ〜二人とも久しぶりだな〜。元気だった?」 「元気でしたよ〜。てか何で先輩来てるんですか。先輩来ると思わなかったので驚きましたよ」  笑顔で話しかけてきた恩田先輩に一花は色々話しかけていたけれど、私は軽く頭を下げるだけに留めておく。  何で普通に話しかけてこれるんだろ……。終わったことだからってことなんだと思うけど、笑顔で話せるような気持ちになんてなれないよ。 「花音。少し話せない?」  しばらく一花と話していた恩田先輩から穏やかな笑みを向けられ、息をのむ。 「……無理。です!」  そう言って立ち上がると、恩田先輩が少し傷ついたような顔をしたのが目に入ったけど、お構いなしに会場から出て行く。 「のん、待って。カバン忘れてるよ」  私を追いかけてきてくれた一花に腕を掴まれ、階段の少し前の辺りで立ち止まる。持ってきてくれたカバンを受け取り、一花と視線を合わせる。
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

175人が本棚に入れています
本棚に追加