16、忘れたはずなのに

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 それから二週間ほど過ぎたある日の夜。 「今からご飯行かない?」 「いいよ。じゃあ、あっきーとか他の女の子も誘ってみんなでいこっか」 「二人で行きたい」 「ん〜と、ごめんね。二人では行けないかな。彼氏が心配しちゃうと思うし」  22時にバイトが終わって帰ろうとしたんだけど、スーパーの従業員用出入り口から出たところで藤田くんと会った。どうでもいい雑談をしていたらご飯に誘われて、二人で行くのは断ったんだけど、不服そうな様子。  藤田くんとはあれから会えば話す程度でご飯に誘われることはなかったんだけど、最近になってまた誘ってくるようになったんだよね。断っても何回も誘ってくるし、正直ちょっと困ってる。  みんなで行くなら全然いいんだけど、藤田くんはネックレスの件もあるし、男の子と二人でご飯行くのも慧に悪いし。  「まだ付き合ってるの?」 「まだって。失礼だなぁ。私にしては珍しく続いてますよ〜」  冗談混じりにそう返すと、いきなり腕を掴まれる。 「本当に彼氏のこと好きなの?」 「好きだよ?」 「花音ちゃんも俺のことが好きだと思ったのに。何回もご飯行ったし、優しくしてくれた」 「あの、ちょっとよく分からないんだけど。とりあえず一回離して?」 「俺があげたネックレスもたまに付けてくれてるし。それって、そういうことじゃないの?」  ええ……。それは好きなブランドのネックレスだし、売るのも捨てるのも申し訳ないし、使わないともったいないかなと思ってたまに使わせてもらってただけなんだけど。  男の子からもらったアクセサリーをつける=好きってことになっちゃうの?  やんわりと離してって言っても全然手を離してくれないし、真顔で迫ってくるし、軽く恐怖を感じる。
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