16、忘れたはずなのに

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「過ぎちゃったことはもうしょうがないよ。人間だし、魔が差すこともあるよね」 「のんちゃんもそういう時あるの?」 「ん〜……。私は経験多いからね。もう十分色々な人を知ってるし、今の彼氏に十分満足させてもらってるし、もう冒険しなくてもいいかなって。あんまり経験なかったら、もしかしたらふいに魔が差すこともあるのかもしれないけど」  私の場合は寂しくてつい付き合ったり別れたり、簡単に寝たりってことを繰り返したらいつのまにか経験人数が多くなっちゃっただけで、別に数こなしたかったわけでもない。同時に複数の人と付き合いたい願望があるわけでもない。浮気二股なんて面倒なことするくらいなら、さっさと別れた方がマシだなって思っちゃうし。  今から経験ない状態に戻ることなんて不可能だから、「もしあまり経験がなかったら自分はどう思うのか」なんて考えても分かるわけがない。  でも、彼女のことが大好きで、私と会うまでは一途に彼女を想ってきた磯川くんはやらかしちゃったんだよね。  根っからの浮気男でもなくて、クズでもない人間でもやらかしちゃう時もある。どちらかの浮気が原因じゃなくても、私と恩田先輩みたいに修復不可能になることだってあるし。そう思うと、永遠の愛なんてどこにもないんだなって感じて、なんだか何も信じられなくなる。  慧も他の女の子とえっちしてみたいとか思ったりするのかな。バレないようにやってくれるならまだいいけど、もし浮気が本気になって、他の女の子に心がうつっちゃったらと思うと、すごく怖い。    慧のことは大好きだし、信じたいって思うのに、でもどうしても不安になってしまう。こんなこと考えてるって話したら、慧には怒られそうだけど……。  そもそもあの日から恩田先輩のことばっかり考えてる私が言えた義理でもないんだろうし、もうなんか気持ちがぐちゃぐちゃで、どうしたらいいのか分からない。    そんなことを話している間にも夜は更けていき、スーパーに止まっている車もほとんどない。磯川くんとずいぶん話し込んじゃったけど、私の中の不安と罪悪感は大きくなるばかりだった。
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