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「ははっ……さいっ、てー」
磯川くんが出て行ったあと、急に何もかもバカバカしくなってきた。乾いた笑いが込み上げてきて、ベッドにボスンと倒れ込む。
結局彼女への愛情を確かめるためのダシにされたってこと? 完全に私ピエロじゃん。
私はこういう女だし別にいいけど、彼女可哀想過ぎ。でも、私に彼を責める資格なんてないか。
「最低なクズは磯川くんじゃなくて、私の方だよね。勢いで後輩の童貞奪って、他人の彼氏と寝て。ほんとに何やってんだろ。何でこんな風になっちゃったのかな……」
磯川くんにはちゃんと帰る場所があるけど、私には帰る場所なんてどこにもない。本当の私を愛してくれる人もいない。
「会いたいよ……。恩田先輩……」
現実を突きつけられたからか急に胸が苦しくなって、もうとっくに枯れたはずの涙がポロポロと出てくる。
無意識のうちに会いたくてももう会えない人の名前をつぶやき、指が勝手にスマホを操作していた。恩田先輩の名前を見つけたけど、今さら電話なんて出来るわけもない。
震える手で画面をスクロールしていたスマホを置き、枕に顔を埋めた。
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