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「二年も付き合ってたんだもんね。やっぱり気になるよね……」
「え?」
ひとりごとのように呟くと、慧はもう片方のイヤホンを外してこちらを見る。
「何でもない」
「いや、絶対怒ってるだろ。やっぱり行くのやめます」
「行ってきていいってば。慧だって高校の時の友達に会いたいでしょ?」
手を握ってきた慧をやんわりと振り払い、レポートの続きをやろうとしたけれど、再び手を掴まれて、慧と向き合う形にされてしまう。
「友達には会いたいけど。先輩が嫌なら行かない。友達には他の機会に会えばいいから」
ダメだな。嫌われないように面倒くさがられないようにって言動には最大限の注意を払っても、結局はこうなっちゃう。
どうしたらいいのかな……。どうしたら、面倒くさくなくて良い彼女になれるんだろう。
「本当に行ってきていいよ。慧もたまには他の女の子とも遊びたいだろうし」
ね?と笑いかけると、慧はすぐに険しい顔つきになる。
「何でそんなこと言うんですか。最近変ですよ。俺何かしました?」
ムッとしてたかと思えば、困ったような顔をした慧に覗き込まれ、曖昧な笑みを浮かべて慧の顔を見上げる。
「ごめんね、本当に何でもない。私のことで負担に思ってほしくないの」
「負担だなんて思ってないです」
膝をつき合わせて向かい合っている慧に両手をぎゅっと握られ、真剣な口調でそう言われる。
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