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「今は私のことが好きかもしれないけど、私と別れて次の彼女が出来たら、すぐに私のことなんてどうでも良くなるよ」
「だから、何でそんなこと言うんですか」
「だって……っ。恩田先輩も慧と同じこと言ってたけど、私から離れていった!!」
「え」
「……あ」
感情が溢れ出して、勝手に口からついて出た言葉を後悔した時にはもう遅かった。とっさに口を押さえた私を慧はじっと見つめてくる。
「恩田先輩って誰ですか」
静かに発せられた慧の一言に、私の身体がびくりと震える。
もうダメだ。完全に終わった。
慧のことを今までも散々傷つけてきたと思うけど、今回はもう確実に修復不可能。
慧と恩田先輩を重ねてしまったことのショックやら罪悪感やらで気持ちがぐちゃぐちゃになって、涙がボロボロと溢れ出す。
泣きたいのは慧の方だと思うのに、慧はそんな私との距離を詰め、優しく抱きしめてくれた。
「泣かないで。大丈夫だから」
「だ、いじょぶじゃないよ。だって、わたし……っ」
「恩田先輩が誰なのか知らないし何があったのか知らないけど、俺とその人は違う人間です。俺は花音先輩から離れない。花音先輩を不安にさせないようにがんばるから、俺のことを信じてくれませんか?」
なだめるように頭を撫でられ、余計に涙が止まらなくなる。今彼と元彼を重ねるという一番やってはいけないことをやらかしたのに、どうしてこんなに優しくしてくれるんだろう。
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