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18、まだ恋人でいたい
慧と距離を置いてから二週間が過ぎたけど、ちょうど二月に入って大学も春休みに入ったので、あれから全く会っていない。サークルは春休み中も相変わらず火金にあるけど、ゼミだったりインターンだったり集中講義がちょうどサークルの時間に入ってしまい、春休みに入ってからは一度も行けてなかった。
大学もサークルも行かなければ、当然慧にも会わないはずなんだけど、お互い下宿生ということもあり、生活範囲が一緒。どうしたって、偶然会ってしまうことは避けられない。
集中講義の後におにぎりを買いに行こうと大学近くのコンビニに寄ると、おにぎりが置いてあるコーナーでちょうど慧と会ってしまった。ダウンを着た慧とばっちり目が合ってしまい、無視することも出来ないので、とりあえず手を振っておく。
「久しぶりですね」
「だね。色々忙しくてサークルも行けなくて」
慧の方から話しかけてきてくれたので、なんとか笑顔を浮かべると、慧は私のことをじっと見つめる。
「痩せたように見えますけど、ちゃんと食べてますか?」
「え、そうかな? 一応食べてるけど、ダイエットの効果が出たかな?」
本当はあんまり食欲がなくて、だいぶ食べる量が減ってしまった。大好きなラーメンも全然食べてないし……。無理矢理笑顔を作ると、心配そうな顔で見られる。
慧が私の頭に手を伸ばしかけ、その手を引っ込めたことに気がついてしまった。
当たり前だけど、もう触ってもらえないんだよね。距離を置きたいっていったのは私の方なんだけど、触れてもらえなかったことに少し傷ついてしまう。
連絡もしないし、二人で会わないし、キスもしないし、触れることも出来ない。
一応名目上は今も彼氏彼女なのかもしれないけど、こんなの付き合ってるって言えないよね。
付き合ってるけど、距離を置いている———こんな中途半端な状態で慧を縛っているよりも、きっぱり別れた方がお互いのためになるのかな。この二週間それは何度も考えたけど、形だけでもまだ恋人の座にしがみついていたくて、結局何も言い出せずにいる。
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