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それからさらに一週間が過ぎたある日の夜。
ゼミの飲み会が入ってたから一応参加したんだけど、相変わらず食欲もないし、楽しく飲む気分にもなれない。いっそのこと限界まで酔っちゃえば嫌なことを全部忘れて楽になれるかと思ったけど、ガブガブ飲んでても全然酔えないし、忘れるどころか余計に辛くなってきた。
私がいても場を盛り下げるだけなので、貸し切ってある居酒屋二階の座敷を抜け出し、座敷廊下の靴を履くところに腰かける。
「こんなところで一人で何してるの?」
右手の薬指にはめている指輪を見てため息をついていると、ふいに後ろから声をかけられて振り向く。
「先輩。少し酔っちゃったみたいで」
そこにいたのはゼミの先輩だったけど、たしか春の飲み会の時にノリでキスしたような気がする。その時ホテルに誘われたんだけど、キスの時に舌入れられたら吐きそうになったから、生理中だからって言い訳して逃げたんだよね。
お酒の上でのことだったし、その後はお互いその時のことには触れなかったけど……。
とりあえず笑って誤魔化しておくと、先輩は私の隣に座った。
「そうなんだ。俺もここで休んでいこうかな。ここ涼しいね」
「ですね。中はみんなの熱気がすごいですよね」
楽しく会話する気分でもなかったので適当に返事をしてたけど、先輩はそんな私に気がついていないみたいで、さらに距離をつめてくる。
「そういえばさ、俺手相見れるんだよね」
「……そうなんですか?」
うっわ、だる。手相見れるとか絶対嘘じゃん。早くどっか行ってくれないかな。
突然手を握ってきた先輩に引き気味で返事をしたけど、お構いなしに手を触ってきた。
「私の手相どうですか?」
「男運が悪いって出てる」
「あはは……。もう〜ひどいなぁ」
先輩の胸を軽く叩くと、その手を掴まれ、顔を寄せられた。そのままキスされそうになったので、顔を背けて先輩の胸を軽く押し、どうにか距離を取る。
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