18、まだ恋人でいたい

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「それなら良かった」 「のんはさ、今も恩田先輩と戻りたいって思ってるの?」 「……分からない。慧のことが大好きだったし、ずっと一緒にいたいと思ってた。その気持ちに嘘はないよ。 でもね、一回恩田先輩に会ったぐらいで簡単に動揺しちゃったのも事実。私も自分で自分の気持ちが分からないんだ……。私、まだ恩田先輩のことが好きなのかな。もう分からないよ……」  右手の指輪を押さえながら一花の方をちらりと見ると、一花はどこか遠くの方を見ていた。 「一回恩田先輩に会って、確かめてきたら?」 「確かめるって何を?」 「慧が好きなのか、それともまだ恩田先輩のことが好きなのか」  目を合わせた一花に言われたことに、心臓がドキリとする。本当はそうした方がいいんじゃないかってこの三週間ずっと考えてた。でもどうしても実行にうつす勇気が出なかったんだ。だって、もしそれで———。 「私はのんには慧の方が合ってると思ってるし、慧がどれだけのんのことを想ってるか知ってるから、慧の方が良いと思ってるけど。恩田先輩だって、慧と同じくらいいい人だし、のんが忘れられない気持ちも分かるよ」 「うん……」 「私は、のんが付き合ってた頃の恩田先輩の幻影に囚われてるんだと思ってたの。だから、前に進みなよって言ったし慧のことも応援してきた。でも、もしのんが今も恩田先輩のことを好きで、今の恩田先輩とやり直したいと思ってるなら、慧と別れてそっちに行った方がのんは幸せになれるのかも」  付き合ってた頃の恩田先輩の幻影に囚われているのか、それとも本物の恩田先輩が今も好きなのか。  一花に言われた言葉をのみこみ、頭の中でゆっくりと整理する。 「私は恩田先輩のことが好きだと思う?」 「それは私には分からないよ。のんにしか分からないことだから」 「そうだよね……。確かめた方がいいのかな」 「うん。辛いかもしれないけど、このままだと余計苦しいでしょ」 「恩田先輩も話したいって言ってくれたし、恩田先輩と話した方が良いのかなって私も思ってたんだ。でもね、やっぱり怖くて勇気が出ないの」 「怖い?」  一花から聞き返され、うんと頷く。
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