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「だって、もしそれでやっぱり恩田先輩が好きってなっちゃったら、私は慧のことを裏切ることになる。私のことをすごくすごく大切にしてくれたのにこんな形で傷つけるなんて、そんなのって酷すぎるよね」
どっちみち慧とは修復不可能なのかもしれないけど、それでも距離を置いてた間にやっぱり元彼の方に戻りたいですって結論を出したとなると、確実に慧を傷つけることになる。
「もしそうなったら慧は可哀想だけど、それは仕方のないことだよ。恩田先輩を選んでも慧を選んでも、私はのんの味方だからね」
いつもは私を全否定して慧の味方をする一花が迷いなく私の味方をしてくれて、涙が出そうになった。
はたからみたら私は最低だと思うし、慧にはずいぶん酷いことをしてると思う。批判されるようなことしかしてない自覚はあるから、周りから批判されても仕方ないとは思ってるけど、親友の一花が離れていくことと慧を傷つけることだけが怖かった。
どうなっても慧を傷つけることは避けられないかもしれないけど、一花だけはそばにいてくれる。先のことを考えると不安しかないけど、一花の存在がすごく心強い。
「ありがと、一花。私、恩田先輩に会ってくる。どうなるか分からないけど、そうしないといけない気がするから。だから、がんばってくるね」
選べるような立場ではないと思うし、もし私がどちらか選んだとしても相手が受け入れてくれるとは限らない。恩田先輩もだけど、これだけ間空けちゃったら慧の気持ちも私から離れちゃってるかもしれないし……。
拒絶されても自業自得だから仕方ないし、どちらかを自由に選べるなんて思ってないけど、ただ確かめたいんだ。恩田先輩と会って話したら、長い間ずっと抱えてきたモヤモヤの正体がはっきりするのかもしれない。
慧と付き合って消えたと思ったけど、また復活したそれ。これは恩田先輩に対する恋心なのか、それともまた別のものなのか……。
恩田先輩と会うのは正直怖いし、自分の気持ちに向き合うのも怖いけど、いい加減この気持ちの正体に私は向き合わなきゃいけないよね。
「うん、がんばれ。何かあったらすぐに電話して」
心強い言葉をかけてくれた一花の肩に寄りかかるようにして、もたれかかる。
大好きだよ、一花。一花がいてくれなかったら、たぶん私は今頃堕ちるとこまで堕ちてたと思う。
一花に感謝してから、恩田先輩と、それから慧に送るメッセージの文面を頭の中で考えた。
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