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焼肉三郎の開店時間の17時まで適当に時間をつぶし、開店してすぐに店の中に入る。
メニューに目を通していると、水を持ってきてくれた店員さんの腕が視界の端に入り、顔をあげる。
「ご注文お決まりでしたら、……げ」
小さな黒いピアス、黒いTシャツに黒いエピロンをつけた慧と目が合った瞬間、慧はあからさまに嫌そうな顔をした。助けを求めて一花の顔を伺ったけれど、一花は素知らぬ顔をしている。ちょ、一花が焼肉三郎に行こうって言ったんだよね?
「あ〜、後からでもいいですか?」
「……かしこまりました。お決まりになりましたら、ベルでお呼びください」
ヘラリと愛想笑いを浮かべると、慧は機械的にそう告げ、無表情で去っていく。
「ほら〜! だから、慧いるかもって言ったじゃん〜。気まずかったぁ」
「同じサークルなんだし、いつかは話さなきゃいけないでしょ。早く話しなよ」
慧が去っていった後に小声で一花に詰め寄ると、冷たい目で見られてしまった。
「そうだけどさ〜」
「松尾先輩と別れた」
ため息をつきながらメニューを見ていると、いきなりぶっこんできた一花の衝撃の一言にバッと顔をあげる。
「また?……おっと」
「四回目かな」
つい口から本音が漏れてしまい、口を押さえたけど、一花は平然としていた。とはいっても、たぶん平気じゃないんよね。
「とりあえず飲み放頼んどく?」
「そうだね、まずは飲んでから」
私の提案に一花も賛成してくれたので、まずは飲み放題と肉、軽くつまめるものを頼むことにした。
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