4、やっぱり最高の親友だよ

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 焼肉三郎の開店時間の17時まで適当に時間をつぶし、開店してすぐに店の中に入る。  メニューに目を通していると、水を持ってきてくれた店員さんの腕が視界の端に入り、顔をあげる。 「ご注文お決まりでしたら、……げ」  小さな黒いピアス、黒いTシャツに黒いエピロンをつけた慧と目が合った瞬間、慧はあからさまに嫌そうな顔をした。助けを求めて一花の顔を伺ったけれど、一花は素知らぬ顔をしている。ちょ、一花が焼肉三郎に行こうって言ったんだよね? 「あ〜、後からでもいいですか?」 「……かしこまりました。お決まりになりましたら、ベルでお呼びください」  ヘラリと愛想笑いを浮かべると、慧は機械的にそう告げ、無表情で去っていく。 「ほら〜! だから、慧いるかもって言ったじゃん〜。気まずかったぁ」 「同じサークルなんだし、いつかは話さなきゃいけないでしょ。早く話しなよ」    慧が去っていった後に小声で一花に詰め寄ると、冷たい目で見られてしまった。 「そうだけどさ〜」 「松尾先輩と別れた」  ため息をつきながらメニューを見ていると、いきなりぶっこんできた一花の衝撃の一言にバッと顔をあげる。 「また?……おっと」 「四回目かな」  つい口から本音が漏れてしまい、口を押さえたけど、一花は平然としていた。とはいっても、たぶん平気じゃないんよね。 「とりあえず飲み放頼んどく?」 「そうだね、まずは飲んでから」  私の提案に一花も賛成してくれたので、まずは飲み放題と肉、軽くつまめるものを頼むことにした。
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