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「小学校の先生はどう? 楽しい?」
「色々あるけど、楽しいよ」
私は紅茶、恩田先輩はコーヒーを頼み、まずは軽く近況報告をしながらたわいもない話をする。
「それならよかった。あの、今彼女とかって……」
「うん、彼女は最近出来たんだ」
少し恥ずかしそうにしながらも嬉しそうにそう答えた恩田先輩に初っ端から出鼻をくじかれたような、でも少しホッとしたような複雑な気持ちになる。
なんだ、彼女いるんだ。
彼女いるなら、自分の気持ちを確かめるとかそれ以前の問題だったね。
「そ、うなんだ。どんな人?」
「職場の同僚。一緒にいてすごく楽なんだ」
一緒にいて楽、かぁ。
私とは正反対だよね。
嬉しそうに話す恩田先輩の様子からも彼女のことが好きなんだなって伝わってくるし、私は恩田先輩のそういう存在にはなれなかったんだなって思うとモヤモヤが広がっていく。
「花音は?」
「え?」
モヤモヤを誤魔化すように紅茶を飲んでいると、ふいに話を振られて紅茶のカップをテーブルに置く。
「彼氏。いるんだろ?」
私の右手の薬指についている指輪に視線をやってから、恩田先輩は私と視線を合わす。
「う、うん。ひとつ年下の人なんだけどね、優しい人で、今すごく幸せ」
「幸せそうで良かった」
幸せどころか距離を置いている状態なのに、恩田先輩があまりにも彼女のことを嬉しそうに話すから見栄をはってそんなことを言っちゃったけど。心からの笑みを返されて、微妙な気持ちになる。
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