19、最初からそんなつもりなかったと思うよ

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「それ聞いて安心したよ」 「うん……」 「気持ちの整理がつくまで時間がかかっちゃったけど、花音にはずっと謝りたいって思ってたんだ」 「謝るって、何を?」  今までニコニコしていたのに急に神妙な面持ちになった恩田先輩に私も声をひそめる。 「付き合ってた時のこと。花音にあまり構ってあげられなかったし、一方的に別れ話しただろ?」 「それは……。私が恩田先輩を追いつめたからで……。謝られることじゃないよ」 「違うんだ。言い訳に聞こえるかもしれないけど、あの時親が離婚寸前でそれ関連で色々あってさ。就職のことや卒論や大学のことに加えて、家庭の問題まであって、花音のことまで気にしてあげられる余裕がなかったんだ」 「そうだったんだ……。ごめんね、そんな状況だったなんて全く思わなくて」 「それは俺が言わなかったからだよ。花音のせいじゃない」  そう言われても、そんなに大変な状況だったのに、私の変な意地のせいで恩田先輩をさらに追いつめていたかと思うと、すごく申し訳ない気持ちになる。 「俺の方が三つも年上だから頼られたいって気持ちもあったし、花音に情けないとこ見せたくなかった。でもそれであんなことになるぐらいなら、花音に全部話せば良かったんだよな。 花音のことが好きなのに、花音といるとしんどくなって離れることにしたけど、でもそれは間違いだったんじゃないかってずっと後悔してたんだ。花音の話をもっと聞いてあげればよかった、もう少し違う接し方が出来たんじゃないかって何度も思ったよ」  口元に笑みを浮かべながらもどこか苦しそうに話してくれた恩田先輩に胸が締め付けられる。  恩田先輩も後悔してたんだね。  恩田先輩は私のことを嫌いになって別れたんだって思ってたけど、そうじゃなかったんだ……。
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