175人が本棚に入れています
本棚に追加
/226ページ
「花音はやり直したいって言ってくれてたのに、ごめんな」
テーブルの正面に座っている恩田先輩に頭を下げられ、フルフルと首を横に振る。
「短い間だったけど、花音と付き合えて楽しかった。花音のことがすごく好きだった」
「わたし……っ、私も大好きだった。幸せだったよ」
胸が苦しくて言葉が出てこなかったけど、それだけは伝えたくてどうにか言葉を絞り出す。
別れる直前の嫌な記憶や苦しい気持ちばかりが印象に残って、そればかりを思い出してたけど、ちゃんと恩田先輩も私を好きでいてくれたし、幸せだった時間もたしかにあったんだよね。
「だからさ、花音が今幸せだって聞いて安心したよ。俺は幸せにしてあげられなかったけど、花音のことはこれからもずっと大切に思ってるし、幸せになってほしい」
「……。本当はね、今の彼氏とあんまり上手くいってないんだ」
恩田先輩の顔はすごく穏やかで、嘘をついたことが辛くなって、本当のことを打ち明ける。
「何で?」
「あの、これ聞いて誤解しないでほしいんだけど、私恩田先輩に彼女がいるって知らなかったから、だからあの……」
「うん、大丈夫だから言ってみて」
どうやって話したらいいのか分からなくてしどろもどろになっていたけど、優しく促されて続きを口にする。
「今の彼氏のことは好きなんだけど、私恩田先輩のことが忘れられなくて、それで彼氏とも距離置くことになったの。今日はね、自分の気持ちを確かめようと思ってきたんだ」
「今も俺を好きかどうか?」
「……うん」
探るような目で私を見た恩田先輩に頷きを返すと、恩田先輩は一瞬顎に手を置いて首を傾げてから、もう一度私の目を見つめる。
最初のコメントを投稿しよう!