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「花音は最初から俺とヨリ戻す気なんてなかったよ。彼氏のことしか見てないと思う」
「どうしてそんなこと分かるの?」
私の気持ちなんて分かるはずもないのに、なぜか断言してくる恩田先輩を訝しげな目で見てしまう。
「もし少しでも俺に気持ちがあるのなら、指輪外してくるだろ。そうしなかったのは、彼氏のことが好きだからなんじゃないの?」
「……!」
右手の指輪のことを指摘され、ハッとする。
そこまで考えてなかったけど、たしかに恩田先輩の言う通りなのかもしれない。
実際にヨリを戻せるかどうかは置いておくとして、もしあわよくばヨリ戻せたらいいなという気持ちが少しでもあったなら、私は指輪を外してきたのかもしれない。これからヨリを戻そうと思ってる人の前で、わざわざ彼氏いますアピールをする必要もないし。
慧と距離を置いてからもどうしても指輪を外す気になれなかったのは、恩田先輩じゃなくて慧のことを好きだったから……?
「ごめんな。俺のせいなんだと思うけど、あんな別れ方したから引っかかってただけだと思うよ。たぶんさ、花音は今日俺と終わらせにきたんだよな」
「そう、なのかな。そうなのかも……」
「だろ?」
笑顔を向けてきた恩田先輩にうんと頷く。
自分で自分の気持ちがよく分からなかったけど、私よりも恩田先輩の方が私のことを分かっているのかもしれない。全部言い当てられた気分。
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