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「それで、その恩田先輩とヨリ戻すんですか」
無表情のままの慧にじっと見つめられ、小さく首を横に振る。
「恩田先輩とはもう戻らない。今日できっちり終わらせてきた」
「それで良かったんですか? ずっと忘れられなかったんですよね」
「恩田先輩とは終わったの。本当はもっと前に終わってたんだけど、しっかり話してやっと終わらせることが出来たんだ」
「……そうなんですか」
「ごめんね、上手く説明出来ないんだけど、とにかく恩田先輩とは終わったし、もう気持ちはないから」
慧からの反応は薄かったけど、それでも聞いてはくれているみたいだから、本当に言いたかったことを伝えようと口を開く。
「あのね、私やっぱり慧が好き。
こんなこと言われても今さら信じられないかもしれないし、私のこと許せないと思うけど、もし……。もし慧が私のことを許してくれるなら、慧とやり直したい」
すがるように慧の膝の上に手を置き、気持ちを伝えたけど、慧はうつむいたまま何も反応してくれない。
やっぱり、もう無理なのかな。
そうだよね、どれだけ都合がいいんだって話だよね。元彼のことが忘れられないから距離置きたいって言ったり、かと思えばやっぱり慧が好きって言い出したり。
慧が何か言ってくれるのを待っている間に自分の身勝手さとかどれだけ慧を振り回してきたかとか色々なことが身に染みて、涙が溢れる。
「ごめんね、慧に嫌われてもおかしくないことしちゃったよね。許せなくて当然だと思う」
立ち上がって帰ろうとしたけど、腕を掴んで引き止められた。何か言う前にぐっと引き寄せられ、そのまま慧の胸の中におさめられる。
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