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「で? 今回は何で別れたの?」
「よく分かんない。どうでも良い口ゲンカ」
一杯目のカクテルを半分ぐらい飲んだところで切り出すと、一杯目からすでにほんのり顔を赤くした一花がわずかにグラスを揺らした。
一花の彼氏は私の元カレの恩田先輩の親友で、去年卒業してったサークルの先輩だ。私は卒業する前に別れちゃったけど、一花は未だに続いてて、別れたりヨリを戻したりしている。
「あ〜いつものアレね」
「うん、今回はほんとにダメかも」
「そうなの? 私も松尾先輩のことは知ってるし、あんまり悪く言いたくないんだけど、もうやめといた方がいいんじゃない?」
「だよね」
「それでも一花が松尾先輩のこと好きなら、とめないけどさぁ。なんかもったいないなって思う。一花モテるんだし、松尾先輩じゃなくてももっと他にも良い人いるよ」
「それを言うなら、のんもじゃん。私はのんが心配だよ」
あ、これブーメランだったわ。
お肉を焼いてお酒飲みながらグダグダ語ってたら、思わぬところでブーメランを食らってしまい、苦笑いを返す。
「私はどうせこんなんだし、堕ちるとこまで堕ちたからね。どうなってもいいかなって」
「どうしてそういうこと言うかな。
てか色々あったってさっき言ってたけど、何があったのよ?」
「新しくバイトに入ってきた人で、けっこうタイプな人いるって言ったじゃん?」
「言ってたね」
「その人彼女いたんだけど、成り行きで最後までした」
そう言ってから一気にお酒を飲み干すと、一花は一瞬私を凝視した後に軽く叫んだ。
「ねえぇぇぇ。のん、それヤバいって」
「分かってる分かってる。いくら知らない人っていっても、彼女にはひどいことしたよね」
「それもそうだけど、……はぁ。もうほんとにのんが心配」
大げさにため息をつかれ、頭を抱えられてしまった。いたたまれなくって一花から視線を逸らし、メニュー表に目を向ける。
「飲み物頼むけど、一花もなんか……って一花!?」
顔を上げると、顔を赤くした一花がボロボロと涙を流していたので、さすがにギョッとしてしまった。
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