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「何かあったんですか」
「何が?」
片方ずつ一花の腕を支えながら夜道を歩いていると、ふいに慧から話しかけられる。反射的に慧の方を見ると、慧は私をじっと見ていた。
「一花先輩がここまで飲むの珍しいですよね」
「あ〜。一花、慧に言っていい?」
「何を〜?」
「松尾先輩のこと」
「いいよ〜……」
目を瞑っていた一花をつつくと、一花はふにゃふにゃと返事をする。この調子だと明日覚えてるか分からないけど、とりあえず許可はもらったしいいよね。
「彼氏と別れたんだって」
「彼氏?」
「一花ね、サークルの先輩と付き合ってたんだ。去年卒業したから、慧は知らないと思うけど」
「そうだったんですか」
「うん。何回もヨリ戻したり別れたりしてるから、またヨリ戻るかもしれないけど」
「はぁ」
「一花モテるんだし、もっと他にいい人見つけてほしいんだけどね〜。一回でも別れちゃったらさ、もう修復するのって難しいんだよ。どれだけ好きでもね」
一花が完全に寝ていることを確認してからそう呟くと、慧は何か言いたげな表情でこちらを見てきた。
「もし上手くいかなかったとしても」
「ん?」
「何か問題があるとしても、相手が自分のことを好きじゃなかったとしても、諦めきれないこともあるんじゃないですか」
急に真剣な表情でそんなことを言い出した慧の意図が掴めず、ポカンとしてしまう。
「あ、そういうこと。慧は元カノに未練あるんだ?」
「何でそうなるんですか。ないですよ」
そういえば高校の時から付き合ってた彼女と別れたんだったと思い出し、そう言ってみるけど、どうやら違ったみたい。速攻で否定されちゃった。
「じゃあ、彼女の方が慧に未練あるとか?」
「そっちもないです。他に好きな人が出来たって、フラれたの俺ですよ?」
「え〜でもさ」
「元々上手くいってなかったんですよ。それで、大学離れて完全に終わったんです。お互いに未練はないです」
「う〜ん、そっかぁ。辛いね」
「話聞いてました?」
よく分からなくて適当に相づちを打ったら、また呆れられちゃった。だってさぁ、じゃあ何で一花の気持ち分かるみたいなこと言うんだろ。その前の彼女と色々あったとか?
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