4、やっぱり最高の親友だよ

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「先輩は?」 「え?」 「前の彼氏に未練あるんですか」  前の彼氏。そう言われて思い浮かぶ人は、一人しかいなかった。  直近に付き合った人でも、その前の人でもない。私の心にいるのは、いつも恩田先輩だけ———。 「……ないよ」 「そうですか」  蘇りそうになる思いを握り潰すように笑顔を作ったけど、慧の顔からは相変わらず感情が読みにくい。 「うん。だから今は彼氏募集中。 どこかにいい人いないかなぁ。ダメな私を分かってくれて、愛してくれる人。なんて、いるわけないか。へへっ」 「いると思いますよ」  おどけて言ってみたけど、思いの外真剣な表情で見つめられて、心臓がドキリとした。 「あ、もうここでいいよ。後は私一人で大丈夫だから。ありがとうね」  そのとき、私のアパートの前についたので、早口でそう言って慧から離れ、一花を抱えてエレベーターに乗る。 「いえ。じゃあ、またサークルで」 「う、うん。あ、そうだ、慧!」 「なに」  去っていく慧を呼び止めると、慧は足を止めてこちらを振り返った。 「私たち、これで仲直りってこと?」 「どうかな」  口ではそんなことを言いながらも、ふっと笑みを浮かべた慧に嬉しくなって私も笑顔になる。 「また今度慧も飲みに行こうよ」 「来年の8月以降に誘ってください」 「あ、そっか。慧はまだ飲めないんだよね。 え、じゃあ、今は私と二歳も違うってこと? わかっ」 「……大して変わらないですよ。 メシならいつでも」 「うんっ! また誘うね!」  ぶんぶん手を振ると、慧も小さく手をあげてくれた。とりあえずこれで仲直り、かな?
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