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「じゃあ、今まで一回も付き合ったことないんだ?」
歌ったりはしゃいだり席移動したりしているうちに、たまたま隣になった藤田くんと話す。私と同じ年で去年からバイトでも見かけた気がするけど、話すのは今日が初めて。
恥ずかしそうに頷く藤田くんが可愛くて、ちょっとだけ母性本能が刺激される。顔もスタイルもそんなに悪くないし、何で彼女出来たことないんだろ?
「女の子に興味ないとか?」
「興味はあるよ。中高とずっと男子校で、大学も理工学部で女子ほとんどいないから」
「出会いがなかったのね。誰か紹介しようか?」
「お願いします」
冗談で言ったんだけど、意外とノリ気?
「ねぇねぇ、王様ゲームやらない?」
「いいねぇ〜!」
紹介出来そうな子いたかなとスマホをスクロールしていると、誰かがそんなことを言い出した。
割り箸にマジックで番号書き始めてる人までいるし、みんな正気?
やったことないけど、王様ゲームってあれでしょ。何番と何番がキスとか、そういうアレ。しかもエスカレートすると舌入れたり。うげ。
いくら私でも、誰彼構わずキスするのはさすがにね。
「私パスで」
そう言った途端、みんなの視線を一身に集めてしまう。
「のんちゃん参加しないんやって」
「え〜」
「花音マジかよ〜」
「からの〜?」
批難するような声を受けた私は、靴を脱いでソファーの上で立ち上がり、マイクを取って口に当てる。
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