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「花音先輩がこんな人だとは思いませんでした」
「よく言われる。外見は可愛くておとなしそうなのに、中身はこんなんだもんね」
「だから自分で言うなって」
うんうんと頷くと、慧はやっぱり呆れたような目で私を見ていた。呆れられるのを通り越して、もはや完全に軽蔑されてると思う。でもしょうがないよね、これが私だし。
「男にだらしないし、雑だし、片付け苦手だし、料理も下手だし。救いようのないダメ女。こんなんだから、付き合ってもすぐフラれるんだよね〜」
「男にだらしないのはどうかと思いますけど、それ以外は別にいいんじゃないですか」
「さっきは思ってたのと違ってガッカリした〜って言ったのに?」
「思ってたのと違ったとは言ったけど、ガッカリしたとは言ってないです。俺は……良いと思いますよ。そういうとこも花音先輩らしいし、可愛いんじゃないですか」
てっきり分かってるなら直せって言われると思ったのに、予想外の発言。もう何言っても手遅れだと思われてるのかもしれないけど。でも、嘘でもちょっと嬉しい。少しだけ元気出た。
「ありがとう。でもね〜私から男にだらしないの取ったら別人になっちゃうからなぁ。直せないかも♡」
「やっぱり救いようのない人ですね」
「あっは。ねぇ、慧」
「なに」
慧の両頬に手を置くと、慧も私の手を上から握る。
「キスする?」
「は?」
「キスする?」
「いや……ちょっとおかしいんじゃないんですか」
「しないの?」
慧の顔を覗き込み、黒い瞳をじっと見つめると、慧が息をのんだのが分かった。
「……します」
少しずつ距離が近くなっていき、どちらともなく唇が重なった。
唇が離れると、隣にいた慧が私の上に覆い被さる。
「慧」
「うん」
「キスして?」
慧の下で彼の名前を呼ぶと、慧は私の顔の横に両手をつき、そのまま顔を近づけてくる。柔らかいものを押し当てられ、唇を薄く開くと、慧の舌が入り込んできた。ソレを軽く吸ってあげると、慧の手が私の頭を抱え込み、口づけがさらに深くなる。
お酒飲んだ後でも、やっぱり慧のキスは気持ち悪くならないな。あったかくて、優しくて……。あ、ダメだ。ふわふわして気持ち良くて、本格的に眠くなってきた。もうむり、かも———。
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