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6、今のままが一番良いんです
七月最初の土曜日。22時にバイトを終え、制服から私服に着替えて外に出ると、従業員用出入り口を出たところに藤田くんがいた。
「おつかれさまです」
「おつかれ〜。どうしたの?」
「そういえば連絡先聞いてなかったと思って」
「あ〜誰か紹介するって言ってたね。どんな子がタイプ?」
すっかり忘れてたけど、言われて思い出した。カバンの中からスマホを取り出すと、藤田くんは苦笑いを浮かべる。
「紹介はもういいんだ。それより花音ちゃんの連絡先教えて」
「え? うん。もちろん」
ん〜? 懐かれた?
藤田くんの反応を不思議に思いながらも、とりあえず連絡先を交換する。
「あの、さ」
「うん」
「良かったら、これから何か食べに行かない?」
「これから? いいけど……あ、ちょっと待って」
言いにくそうに切り出してきた藤田くんからの誘いを受けようと思ったけど、通知音に気がついてスマホをタップする。スマホをチェックすると、メッセージの差出人は慧だった。
『バイト終わった。そっちは?
現地集合? 迎えに行く?』
そうだった、今日は慧とラーメン食べに行く約束してたんだよね。酔い潰れた私を迎えに来てくれた日以降、ちょくちょく誘ってくれるようになった。
ひとまず『現地集合で』と高速でメッセージを返したあと、両手を合わせて片目を瞑る。
「ごめんね。今日友達と約束してたんだ。
今度バイト終わったら食べに行こ?」
「……うん、分かった。また連絡するね」
バイバイと藤田くんに手を振ると、慧と約束してたラーメン屋の方へと歩き出す。
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