6、今のままが一番良いんです

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 ラーメン屋から歩いて五分ほどで慧のアパートに着く。慧の部屋に来るのはこれで二回目だけど、相変わらずきちんと整理されていて、綺麗な部屋。  慧に出してもらった冷たいウーロン茶を飲んでいると、壁に立てかけられているギターケースが目に入る。 「家でも練習してる?」 「たまに」  それを指差すと、慧もギターケースの方をチラリと見てから頷く。 「ねぇねぇ、ちょっとギター弾いてみてもいい?」 「弾いたことあるんですか?」 「高校生の時にちょっとだけ」 「そうですか。どうぞ」  ダメ元で言ってみたんだけど、あっさりとOKが出た。  すぐに立ち上がった慧はギターケースを手に取ると、ケースから黒のエレキギターを取り出し、手慣れた様子でヘッドホンとアンプとギターを接続する。それから、私の頭にもヘッドホンを被せると、スマホのアプリで原曲とコードを流してくれた。 「弾けるかなぁ。……ん〜なんか変だよね」  スマホの画面に出てくるコードを見ながら弦を押さえてみるけど、思ったように音が出ない。どうやるんだったかなぁ。  高校生の時に一通り楽器はやって、キーボード は家でも少し練習してたけど、ほぼほぼボーカル専門だったし、ギターを弾くのは数年ぶり。 「押さえるとこ違いますよ」  うーんと首をひねっていると、私を包み込みように後ろから手を回され、両手を上から握られた。 「手小さいですね」 「そう?」  そこまで自分の手が小さいと思ったことないけど、言われてみれば小さい方かもしれない。というよりも、慧の手が大きい気がする。 「慧は手大きいね。指も長くてうらやましい」  これだけ指長かったら、楽器を弾くのにも向いてそう。そんなことをぼんやり考えていると、慧が無言で私の手をぎゅっと握った。 「これじゃギター弾けない」 「真面目に弾く気なかったんじゃないですか」  クスクス笑いながら慧の胸にもたれかかると、慧は私からギターとヘッドホンを取り上げて床に置く。 「え〜あるよ。教えてよ」 「やる気があるなら今度教えます」 「今度って———」  慧の方に首だけで振り返ると、その瞬間に唇を重ねられた。
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