6、今のままが一番良いんです

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「大学の友達からでした」  一花にメッセージを返し終えると、ちょうど電話を終えた慧がこちらを振り向く。 「私も。一花からだった。彼氏と旅行行くんだって」 「彼氏出来たんですか?」 「例の先輩。またヨリ戻したらしいよ」 「そうなんですか」 「うん。車で行くんだって。車あると遠出出来ていいよね。私も車持ってる彼氏がほしいなぁ」 「夏休みに入ったら、車校行って免許とるつもりです」  何気なく言っただけでそこまで本気で言ったわけじゃなかったけど、予想外に真剣なトーンで言われ、返す言葉に困る。 「ちょうど姉が車を買い替えるみたいで、今使ってる車は譲ってくれるそうです」 「? うん」  やっぱり慧が何を言いたいのかよく分からなくて、曖昧に相槌を返す。慧はそんな私の右手を取り、それを両手でぎゅっと握る。 「免許取って車も手に入ったら、色々なとこに連れて行きます。部屋の掃除もします。 良い彼氏になれるように努力します。 だから、———俺と付き合いませんか?」  冗談だとはとても思えないくらいに真剣な目で言われ、嫌な汗が背中を流れていった。その目を見ていられなくて一瞬うつむいて、数秒後に顔を上げる。
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