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「慧と付き合ったら、きっと楽しいよね。
一緒にいて楽しいし、そっけなく見えて慧は優しいし、慧の彼女になれる子はすごく幸せだと思う」
「じゃあ、」
慧と一緒にいたらお酒を飲まなくても楽しいし、慧はすごく優しくて誠実だから、付き合ったらきっと大切にしてくれると思う。でも、だからこそ私は———。
握られた手をさりげなく外し、何か言いかけた慧に被せるように言葉を続ける。
「でも、ごめんね。慧とは付き合えない」
「理由を聞いてもいいですか」
慧と寝た翌朝と同じことを言われ、思わず苦笑いを浮かべる。
寂しいのは嫌い。彼氏がいないのも苦手。
もし付き合おうと言われたのが慧じゃなかったら、迷いなく頷いてたと思う。
でも、慧とは付き合いたくない。下手に付き合って、今の関係を壊したくないの。
真面目で誠実な慧と付き合っても、どうせ幻滅してすぐにフラれるのがオチだろうし、慧と付き合って慧のことを本気で好きになって———また失敗するのが怖い。
「慧とはそういう関係になりたくないから。良い友達でいたいの」
「友達?」
その言葉に眉を寄せたあと、慧は納得出来ないというような表情で私の言葉を繰り返す。
そうだよね。さっきまでは恋人みたいにいちゃついてたくせに、付き合うのは無理です友達でいたいって意味分からないよね。
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