7、はぐらかすのやめてもらってもいいですか

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「のん? 何してるの?」  部室のドアが閉まると同時に後ろから声をかけられて振り向くと、片耳だけイヤホンをつけた一花が不思議そうな顔で私を見ていた。 「今日の二年飲み私の部屋でやることになったんだけど、部屋が超汚くて。授業あるしどうしようかなって思ってたけど、慧が片付けてくれるって言うから」 「だから鍵渡してたの?」 「うん」 「付き合うことにしたの?」 「え? ううん、付き合ってないよ」  話の流れがよく分からないけど、とりあえず否定しておくと、一花はますます不可解だと言わんばかりの顔をする。 「いくら友達でも鍵渡すのって怖くない?」  訝しげな顔で見つめられ、たしかにと頷く。  よっぽど大丈夫だとは思うけど、自分がいない時に一人暮らしの部屋に誰かを入れるのはちょっと怖いかも。 「まあね。よっぽど信用してる人じゃなきゃ無理かな。でも慧は大丈夫だよ。だって慧だし」  慧以外に鍵預けられるのは一花くらいかな。  迷いなくそう告げると、一花は私の顔をじっと見つめる。 「ふぅん、それで付き合ってないんだ。慧もがんばるね」 「うん。だから、お礼に回転寿司おごるつもり」 「そういうことじゃなくて」 「え?」 「あ〜あ、かわいそ慧」  意味深なことをつぶやいた一花は私の肩を軽く叩き、部室に入っていた。
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