176人が本棚に入れています
本棚に追加
それから一時間ほど過ぎた頃、誰かが一年も呼ぼうとか言い出し始めた。
「花音、慧に電話しなよ。慧と仲良いでしょ」
「え〜この時間から来るかなぁ」
友だちにのしかかられてスマホを見たけど、もう23時を過ぎてる。来ないとは思うけど、しつこく言ってくるし、一応形だけ電話しとこうかな。
慧に電話をかけると、何回か呼び出し音が鳴った後に電話が繋がる。
「慧? 今何してた?」
『今? ちょうどバイト終わって帰るところですけど。どうかしたんですか?』
「おつかれ。今みんなでカラオケ来てるんだけど、慧もこない?」
『今からですか?』
「あ、疲れてるなら無理しなくても」
『行きます。どこですか?』
いいよ、と言う前に食い気味にそう言われ、店の名前を伝えると電話が切れた。
「慧来るって」
慧が来たのは、私が友だちにそう伝えたから十五分くらい経った頃。
「慧遅〜い」
「これでも急いできたんですよ」
ドアを開けて部屋の中に入るなり、誰かにウザ絡みされる慧の手を掴み、隣に座らせておく。
「お前がいないから花音が寂しがってたよ?」
「はあ」
一言もそんなこと言ってないし、みんな悪ふざけしすぎ。近くにいた子にそんなことを言われ、面倒くさそうに聞き流している慧の身体にもたれかかる。
「そうそう、慧がいないとつまんないじゃん」
ひとまず乗っかっておくと、少し離れたところから何か言いたそうにしている一花と目が合ったけど、苦笑いを返してから視線を逸らす。
最初のコメントを投稿しよう!