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「普通の友達ですよ」
「そう? みくちゃん彼氏いないって言ってたし、良いと思うんだけどな〜。私はあんま絡んだことないけど、いい子そうだし」
「どうしてみくとくっつけたがるんですか」
「みくちゃんじゃなくても、他の一年でもいいし、サークル以外の子でもいいんだけどね。慧はもっといろんな女の子に目を向けた方がいいと思うよ?」
「どういう意味ですか」
だんだん慧がイライラしてきてるのが伝わってきたけど、ここで引くわけにもいかず、口元に笑みを浮かべる。
「そのままの意味だよ? 大学にも大学の外にも女の子はいっぱいいるんだし、一人に固執してたら損するんじゃないかな〜と思って」
「それって、俺に好かれてるのが迷惑だって言いたいの?」
核心に触れないように上手くはぐらかしてたつもりだったのに、核心に触れられてしまい、言葉に詰まる。
「そんなこと言ってないよ。ただ若いな〜と思っただけ」
何て返そうか考えたのち、半笑いでそう口にした。
「一つしか変わらないじゃないですか」
真顔で返されて、思わず苦笑いをこぼす。
実年齢の問題じゃなくて、これは経験値の差。しかも良い方じゃなくて、悪い方の。
慧のまっすぐな想いをそのまま受け止めるには、私はあまりに擦れすぎている。
もし一年前に慧と出会えてたら、別の未来が待ってたのかな。
「慧」
「なに」
「手つなごっか」
慧の方に片手を差し出すと、無言でその手を握られた。
ごめんね、慧。
私って本気でクズで、最低だよね。
慧の気持ちを受け入れて、前に進む勇気はないの。そのくせ、私のことを好きでいてくれる慧を手放したくないと思ってるんだから———。
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