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翌日の木曜日、バイトが終わってからそのまま勤務先のスーパーで小さなショートケーキを買って、メッセージを送ってから慧のアパートに向かう。
チャイムを押すとすぐに出てくれた慧に、にっこりと笑いかける。
「何してた?」
「さっきまで友達と遊んでて、今帰ってきたとこです」
「あ、そうなんだ。じゃあ、これはもういらないかな」
つい勢いできちゃったけど、彼女がいなくても誕生日に遊ぶ友達くらいはいるよね。ケーキももう食べたかもしれないし。
買ってきたケーキの袋を掲げて眉を下げると、「入ってください」と慧がドアを大きく開けてくれた。
*
「覚えてくれてたんですね」
「誕生日?」
テーブルの上で私が買ってきたショートケーキを食べながら、ふいに言われた言葉を尋ね返すと、無言で頷かれる。
「もちろん覚えてるよ〜。19歳の誕生日おめでとう!」
カバンから誕生日プレゼントを取り出し、笑顔でそれを手渡す。慧はそれを受け取ってはくれたけど、真顔のまま。
「開けてもいいですか」
「うん」
慧から聞かれたことに了承すると、慧は封を破って中身を出したけれど、それに対して何も言ってくれない。
う〜ん。もしかして迷惑だった? やっぱり彼女でもないのにアクセサリーはやめといた方が良かったかな。
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