8、彼氏(仮)になってくれませんか?

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「これはね、元彼からのプレゼントじゃないよ。昨日バイト先の人にもらったの」  首元のネックレスに触れ、苦笑いを浮かべる。 「彼氏出来たんですか?」 「ううん、彼氏じゃない……と、思うんだけどね」 「思う?」 「なんかね、誕生日でも何でもないのに突然くれたんだよね。たぶんこれすごく高いと思うんだけど。ただの友達にも普通にあげたりするものなのかな?」  なんとなく声をひそめると、慧も驚いたように眉をひそめた。 「普通ではないですよね」 「やっぱりそう思う?」 「それ、相手はもう付き合ってるつもりなんじゃないですか」 「えー。でも数回しか遊んでないし、そんな感じでもなかったけどなぁ」 「どうせ思わせぶりな態度でもとってたんじゃないですか」  むぅと口を尖らすと、冷めた視線を送られてしまう。はっきりと否定は出来ないけどさ、でもそんな誰彼構わず思わせぶりなことしてない……はず。 「ねぇ、けっこうひどいよね」  何気なく慧の腕に触れると、その腕を慧に掴まれた。掴まれた腕を引かれ、ぐっと引き寄せられて、反射的に目を瞑る。
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